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To L 試し読み

「ごめん」
 それしか浮かばなかった。
「何だよ、急に」
 その声は、やさしくて。あったかくて。
 受話器から聞こえて来る声と実際に会って聞く声。
 ユウのそれは、いつだって同じ。
 だから安心する。
「その、ほら……殴っちゃって……」
 ユウは私が何をしたって怒らない。
 ユウは私に甘いから。
 だから私はユウに、酷いことをしてばかり。
「えー、殴られたっけな、オレ」
 いつもと変わらない声。私の耳に、心地良く響く。
「メグのなんて、本気だったとしても弱いから。殴られたかなんて、わかんないね」
 そうやって笑いながら、私のしたことを責めないんだ。
 怒ってよ。
 私はこんなに、こんなにわがままなのに。
 ユウはそんなに、そんなに穏やかだから。
「お前を怒らせたオレが悪いんだしな」
 ユウはいつだって、私をかばう。
「なんで――」
 私は知ってる。
 ユウが私のためになら、どんなことだってしてくれるってこと。
 私は覚えてる。
 ユウが私のためにしてくれたこと、全部。
 そんなことしたっけな、って、ユウはすぐとぼけるけど。
「なんでいつも、私のことを――」
「分かってるんだろ」
 そう、分かってる。分かってる、けど。
 私は弱いから。
 そんなやさしさを見せられて、頼らずにいられない。
 でも――

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